和歌山の税理士・和田全史です。
昨日、令和8年度税制改正大綱が公表されました。税制改正大綱は毎年のことですが、今回もなかなかの分量です。
公表されたばかりということもあり、細かな制度設計や適用関係については、正直なところまだ読み切れていない部分もあります。そこで今回は、速報として、現時点で「実務上、特に気になる点」「影響が出そうな点」を中心に整理してみました。細部については、今後あらためて確認・整理していく予定です。
基礎控除・給与所得控除の引上げ(物価連動)
今回の改正の大きな柱の一つが、基礎控除および給与所得控除について、物価上昇に連動して引き上げていく仕組みが導入された点です。令和8年分・9年分については、基礎控除の本則が58万円から62万円に、給与所得控除の最低保障額が65万円から69万円に引き上げられます。
課税最低限「178万円」水準への対応
上記の物価連動による引上げに加え、中低所得者への配慮として、課税最低限を178万円とする措置が講じられます。基礎控除の特例や給与所得控除の上乗せを組み合わせる形で対応されており、時限措置も含むやや複雑な設計です。「178万円」という数字だけが一人歩きしやすい点には、注意が必要だと感じています。
NISAの拡充(0歳から利用可能)
つみたて投資枠について、年齢要件が撤廃され、0歳から口座開設が可能となります。子ども名義での長期的な資産形成を想定した制度設計といえそうです。
暗号資産の分離課税化
一定の暗号資産について、申告分離課税と損失の繰越控除を認める方向性が示されました。対象範囲や具体的な制度設計については、今後の情報を待つ必要があります。
青色申告特別控除の見直し
青色申告特別控除については、控除額と要件が整理されます。ポイントだけ挙げると、次のとおりです。
- 現在の55万円控除は、電子申告(e-Tax)で申告することが要件に加わり、65万円控除となります。
- 現在の65万円控除は、電子帳簿保存を要件として、75万円控除へ引き上げられます。
- 現在の10万円控除は、前々年分の収入が1,000万円を超える者は適用対象から除外されます(簡易簿記では控除を受けられないケースが生じます)。
電子化・帳簿整備の有無による差が、これまで以上に明確になる改正といえます。
少額減価償却資産の基準引上げ(40万円未満)
少額減価償却資産の特例について、取得価額の基準が30万円未満から40万円未満に引き上げられます。中小事業者や個人事業主にとっては、日常的な設備投資の処理に影響のある改正です。
消費税の経過措置(3割特例・7割控除)
インボイス制度に関連する経過措置についても整理が行われています。今回、押さえておきたい点は次の2つです。
- 2割特例の終了に伴い、個人事業者に限って、令和9年・令和10年の2年間は3割特例が認められます(法人は対象外)。
- 8割控除の終了後の措置として、令和8年10月から令和10年9月までの期間に限り、7割控除が設けられます。
消費税については、経過措置が段階的に縮小されていく流れが、より明確になってきた印象です。
まとめ
今回はあくまで速報として、気になる点を中心にピックアップしました。制度の細部や実務対応については、まだ読み切れていない部分もありますので、今後あらためて一つずつ整理していく予定です。


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