特定口座は確定申告する?しない?迷ったときの判断基準を税理士が解説

確定申告・所得税
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和歌山で税理士をしている和田全史です。

株式投資や投資信託をしていると、「特定口座(源泉徴収あり)は確定申告した方がいいのか、それともそのままでいいのか」と迷う場面が出てきます。還付になると聞けば申告したくなりますし、一方で「申告しない方が有利なこともある」と言われると、どちらが正解なのか分かりにくいところです。

特定口座は、もともと確定申告をしなくても課税関係が完結する仕組みです。実務的にも、多くの場合はそのまま申告しない選択で問題ありません。もっとも、条件によっては申告した方が有利になるケースもあります。

そこで今回は、「申告する・しない」を判断するための基準だけにしぼって、シンプルに考え方をまとめてみます。

まず結論:多くの人は「申告しない」で問題ありません

結論から言うと、特定口座(源泉徴収あり)の場合、多くの方は確定申告をしなくても問題ありません。

特定口座(源泉徴収あり)は、証券会社が譲渡益や配当金について税額計算と源泉徴収まで行う仕組みです。税金の精算が口座内で完結するため、結果として確定申告を省略できる制度になっています。

そのため、「申告しないと損をするのでは」と考える前に、まずは「基本はそのままでよい」という前提に立つのが出発点です。もともと手続きを簡素にするための仕組みですので、利益が出ているだけの一般的なケースであれば、あえて申告を追加で行う必要性は高くありません。

実務的にも、迷うようなケースでは申告する・しないでの差が少額にとどまることが多く、手間に見合うほどの差にならないことも少なくありません。

もちろん例外はあります。損益通算や損失の繰越、外国税額控除など、申告することで明確に有利になる場面もあります。次のセクションでは、まず「申告しなくてよい人」から整理していきます。

申告しなくてよい人

特定口座(源泉徴収あり)で取引が完結しており、特に申告する目的がない場合は、確定申告をしない選択で問題ありません。具体的には、次のようなケースです。

  • 特定口座(源泉徴収あり)の譲渡益(売却益)のみが発生している
  • 本年中に損失のある口座がなく、損益通算や損失の繰越をする予定がない
  • 前年以前から繰り越している損失がなく、繰越控除を使う必要がない
  • 所得税率が高く、申告しても税額が下がる見込みがない(配当控除のメリットが出ない)
  • 外国税額控除など、申告しないと使えない制度を利用する予定がない

このような場合は、証券会社で税金の計算と源泉徴収が済んでおり、課税関係はその口座内で完結しています。明確な理由がなければ、そのままにしておくのが基本的な考え方になります。

申告した方がよいかもしれない人(税額面では有利になりやすいケース)

次に、特定口座(源泉徴収あり)であっても、確定申告をすると税額面では有利になりやすいケースです。

  • 損失のある口座と利益のある口座があり、損益通算をしたい
  • 本年の損失を翌年以降へ繰り越したい
  • 前年以前から繰り越している損失があり、繰越控除を使いたい
  • 所得税率が低く、総合課税で申告し、配当控除を使うと有利になる可能性がある
  • 外国税額控除を使いたい
  • 他の所得が少なく、基礎控除(特に住民税)の適用枠を大きく残している

これらは、申告する目的がはっきりしており、自分の税金についてはメリットが生じる可能性が高いケースです。ただし、申告すると所得として算入されることになり、国民健康保険料や保育料など税金以外の負担や、住民税の非課税判定、扶養判定などに影響する場合があります。所得税額だけで即断せず、自分の税金以外の負担が増えないかも含めて検討することが重要です。

次のセクションでは、税金以外の影響も含めて判断を迷いやすいケースについて見ていきます。

申告判断を慎重に行いたいケース

前のセクションに当てはまる場合でも、申告すると所得として算入されるため、所得税・住民税だけでなく、保険料や各種制度の判定に影響することがあります。自分の税金の増減だけで即断せず、次のような影響がないかを確認した上で判断したいところです。

  • 国民健康保険、後期高齢者医療保険に加入している人、介護保険・第1号被保険者(65歳以上)の人

    所得の増加により、保険料が上がることがあります。

  • 配偶者控除、扶養控除などの対象となっている人

    所得の増加により、控除の対象から外れ、配偶者や親などの税額が増えることがあります。

  • 住民税の非課税基準付近にいる人

    申告により非課税から外れると、各種給付や負担軽減の対象外になる場合があります。例えば、非課税世帯を要件とする給付の対象から外れたり、保険料の軽減が受けられなくなるなど、税金以外の負担が増えることがあります。

  • 保育料、医療費助成、各種給付など、所得金額が判定に影響する制度を利用している人

    所得の増加により、自己負担が増えたり、制度の対象外になる場合があります。

このようなケースでは、「所得税がいくら還付されるか(減るか)」だけでなく、自分の税金以外の負担が増えないかも含めて比較し、最終判断する必要があるといえます。

申告しても影響が出にくい人

次のような人は、申告による保険料や各種制度への影響が比較的小さいことが多く、税額メリットがある場合には申告を検討しやすいといえます。

  • 社会保険に加入している給与所得者

    配当や株式の譲渡益を申告しても、健康保険料や厚生年金保険料は給与額を基準に決まるため、通常は影響しません。

  • 配偶者控除や扶養控除の判定に影響しない水準にある人

    所得が増えても、配偶者や家族の税額に影響が出ないと見込まれる場合です。

  • 住民税の非課税基準や各種所得判定のラインから十分余裕がある人

    多少所得が増えても、制度の判定区分が変わらない可能性が高いといえます。

このような場合は、税額メリットを中心に判断しても大きな問題になりにくいといえますが、最終的には自分の状況に当てはめて確認することが大切です。

なお、会社員本人が申告しても健康保険料等に影響することは通常ありませんが、配偶者や子など被扶養者となっている人が申告する場合には、扶養判定に影響することがあります。

まとめ

特定口座(源泉徴収あり)の取引については、制度上は確定申告をしなくても課税関係が完結する仕組みとなっています。そのため、明確な目的がない場合は、申告しないという選択が基本になります。

一方で、損益通算や損失の繰越、配当控除、外国税額控除など、申告することで税額面のメリットが生じるケースもあります。ただし、申告によって所得に算入されることで、保険料や各種制度の判定に影響する可能性もあるため、税額だけで判断するのは適切ではありません。

最終的には、

  • 税額がどれだけ増減するか
  • 自分の税金以外の負担が増えないか

をあわせて確認し、メリットと影響の両方を踏まえて判断することが大切です。

※本記事は、執筆時点の法令・制度等に基づいて作成しています。
内容については正確を期しておりますが、今後の法改正等により変更される場合があります。
実際の適用にあたっては、最新の情報をご確認のうえ、専門家等にご相談ください。
なお、本記事の内容に基づいて生じた損害等については、当事務所では責任を負いかねますのでご了承ください。
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