3割特例は個人事業者のみ!法人は対象外です- 税制改正大綱に明記されたインボイス経過措置を整理

コラム
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和歌山の税理士、和田全史です。

税制改正大綱が公表され、インボイス制度に関する経過措置についても、内容が整理されてきました。

実は、大綱が公表される前の段階でも、報道ベースの情報をもとに、「2割特例はどうなるのか」「3割特例という話は本当なのか」といった点を整理したことがありますが、今回の大綱で、その方向性がはっきり示された形になります。

その中で、いわゆる「3割特例」が明記されたことから、関心を持たれている方も多いのではないでしょうか。

もっとも、この3割特例については、「誰が使える制度なのか」「法人も対象になるのか」といった点で、誤解や曖昧な理解も少なくありません。

そこで今回は、税制改正大綱で示された内容を踏まえ、3割特例の対象者と制度の位置づけを、実務目線で整理していきたいと思います。

2割特例はいつまで使えるのか

いわゆる「3割特例」の話を理解するためには、まず、これまで設けられてきた「2割特例」がいつまで使えるのかを確認しておく必要があります。

2割特例は恒久的な制度ではなく、令和8年9月末日を含む課税期間で終了することとされています。そのため、個人事業者の場合は、令和8年分の申告までが一つの区切りになります。

この2割特例が終了した後、インボイス登録によって課税事業者となった事業者の負担をどのように考えるのか、という点について、税制改正大綱で整理が行われました。

3割特例は個人事業者のみ!法人は対象外です

税制改正大綱では、2割特例の終了後の経過措置として、いわゆる「3割特例」が示されました。ただし、この3割特例は、誰でも使える制度ではありません。

結論から言うと、3割特例の対象は個人事業者のみで、法人は対象外です。2割特例は法人も対象となっていたこともあり、「3割特例も法人で使えるのではないか」と考えてしまいがちですが、今回の経過措置はそのような整理にはなっていません。

個人事業者が対象とされた理由については、税制改正大綱において、「インボイス制度の定着に向けて事務負担への配慮がより必要と考えられる」ことが挙げられています。一方で、法人が対象外とされた理由については明確な説明はなく、実務の現場では「法人は設立や解散が比較的自由だからではないか」といった話を聞くこともあります。

いずれにしても重要なのは、制度の背景をどう理解するかよりも、3割特例は個人事業者に限られ、法人には適用されないという点を正しく押さえておくことです。

3割特例の内容(対象者・対象期間・仕組み)

いわゆる「3割特例」は、本来は免税事業者となる個人事業者が、インボイス登録により課税事業者となった場合を対象とした経過措置です。

したがって、従来から課税事業者であった個人事業者や、法人は、この特例の対象にはなりません。

この3割特例が使える期間は、令和9年分及び令和10年分の2年間です。2割特例が終了した後の、次の2年間に限って設けられた経過措置という位置づけになります。

制度の仕組みは、2割特例と同様に、申告時の計算を簡便にするものです。具体的には、その課税期間における課税売上に係る消費税額の7割を控除することができ、結果として、納付する消費税額が売上に係る消費税額の3割となります。

言い換えると、実際の課税仕入の額を個別に集計しなくても、「売上に係る消費税額 × 3割」を納付税額として計算できる特例、と理解すると分かりやすいでしょう。

(具体例)課税売上高800万円の場合

例えば、課税売上高が800万円(税率10%)の場合を考えてみます。この場合、課税売上に係る消費税額は80万円です。

2割特例を使った場合、納付する消費税額は、80万円 × 20% = 16万円 となります。

一方、3割特例を使った場合は、80万円 × 30% = 24万円 となります。

このように、同じ売上規模であっても、2割特例と3割特例では、納付税額に差が生じます。3割特例は、2割特例と比べると負担は増えますが、実際の課税仕入を一つ一つ集計せずに計算できるという点では、引き続き簡便な制度といえるでしょう。

3割特例と簡易課税の関係をどう考えるか

3割特例と簡易課税は、いずれも消費税の計算を簡便にする制度ですが、すべての事業者が同じように比較すべきものではありません。

まず、卸売業や小売業に該当する第1種事業・第2種事業については、検討の軸はあくまで、本則課税にするか、簡易課税にするかです。

これらの業種では、簡易課税のみなし仕入率が90%(第1種)または80%(第2種)と高く設定されています。そのため、3割特例よりも簡易課税を選択した方が有利になるケースが多く、3割特例を使うかどうかを検討する場面は、基本的にはありません。

一方で、第3種事業以降については、話が変わってきます。これらの業種では、みなし仕入率が相対的に低く設定されているため、簡易課税が必ずしも有利とは限らず、3割特例を検討する余地が出てきます。

具体的には、次のような業種が該当します。

  • 第3種事業(みなし仕入率70%):製造業、建設業、農業、林業、鉱業など
  • 第4種事業(みなし仕入率60%):飲食店業、その他の事業(第1~第3種、第5・第6種に該当しないもの)
  • 第5種事業(みなし仕入率50%):運輸通信業、金融・保険業、サービス業の一部
  • 第6種事業(みなし仕入率40%):不動産業

これらの業種では、本則課税と3割特例のどちらを選ぶかが、実務上の検討ポイントになります。

3割特例は、申告時に選択できる制度であり、事前の届出を行わず、実際の売上や課税仕入の状況を見たうえで判断できる点に特徴があります。そのため、3割特例を使う価値があるのは、第3種事業以降の事業者に限られると整理できます。

まとめ|3割特例を検討すべき人は限られる

3割特例は、インボイス登録により課税事業者となった個人事業者のみを対象とした、期間限定の経過措置です。法人は対象外であり、適用することはできません。

業種別に見ると、第1種事業・第2種事業では、みなし仕入率が高いため、検討の中心は本則課税か簡易課税かであり、3割特例を比較対象とする場面は基本的にありません。

一方で、第3種事業以降の個人事業者については、簡易課税が必ずしも有利とは限らず、本則課税と3割特例のどちらを選ぶかが実務上の検討ポイントになります。

つまり、3割特例を検討する価値があるのは、第3種事業以降の個人事業者に限られ、法人は使えない制度という点が、この制度の要点です。

※本記事は、執筆時点の法令・制度等に基づいて作成しています。
内容については正確を期しておりますが、今後の法改正等により変更される場合があります。
実際の適用にあたっては、最新の情報をご確認のうえ、専門家等にご相談ください。
なお、本記事の内容に基づいて生じた損害等については、当事務所では責任を負いかねますのでご了承ください。
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