確定申告が必要な人・不要な人-よくある勘違い10選を税理士が解説

コラム
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和歌山で税理士をしている和田全史です。

これから確定申告の時期が近づいてくると、「自分は申告が必要でしょうか」というご相談を多くいただきます。会社員の方、副業をされている方、年金を受給されている方、そして個人事業主・フリーランスの方など、立場によって取扱いが異なるため、判断に迷われる場面は少なくありません。

確定申告については、「申告しなくてよいと思っていたが、実際には必要だった」というケースがある一方で、「申告義務はなかったものの、申告しておけば還付を受けられた」という場合もあります。制度の細かな条件によって結論が変わるため、思い込みだけで判断するのは難しいのが実情です。

確定申告は、事業をしている方だけの手続きではなく、会社員や年金を受給している方にとっても関係のある身近な制度です。基本的な考え方を押さえておくだけで、ご自身の状況に合った対応が取りやすくなります。

そこで今回は、実務の現場で特にご質問の多い内容を中心に、「必要・不要の判断でよくある勘違い」を10項目取り上げました。これから申告準備を進める際の確認として、順番にご覧いただければと思います。

① ふるさと納税はワンストップ特例を出せば必ず完結する

ふるさと納税については、「ワンストップ特例制度を出しておけば確定申告は不要」と考えられていることが多いのですが、すべてのケースで完結するわけではありません。

ワンストップ特例は、確定申告を行わない方を前提とした制度です。そのため、医療費控除や住宅ローン控除の初年度申告、副業収入の申告など、ほかの理由で確定申告を行う場合には、この特例は利用できず、ふるさと納税分も含めて確定申告で寄附金控除の手続きをすることになります。

また、寄附先が6団体以上になった場合や、申請書の提出期限に間に合わなかった場合のほか、申請後に住所変更があったにもかかわらず変更届の提出をしていない場合も、特例は適用されません。

ワンストップ特例は便利な制度ですが、「申請すればすべて完了する」という仕組みではありません。ご自身の状況に変更がないかどうかも含めて確認しておくことが大切です。

② 医療費は10万円を超えないと控除できない

医療費控除について、「年間10万円を超えないと対象にならない」と理解されていることが多いのですが、実際の基準はもう少し細かく定められています。

制度上は、まず「総所得金額等の5%」を基準として計算し、その金額が10万円を超える場合は10万円を上限とする、という仕組みになっています。つまり、10万円が一律の基準というよりも、所得に応じて基準額が決まる制度といえます。

たとえば、所得が150万円の方であれば、基準は7万5千円(150万円×5%)となるため、医療費が8万円でも控除の対象になります。

また、医療費は本人分だけでなく、生計を一にする配偶者や子ども、親などの医療費を支払った場合には、その分も合算して計算できます。個人ごとでは少額でも、世帯全体では基準を超えるケースも少なくありません。

なお、医療費控除は「支払った医療費がそのまま戻る制度」ではなく、控除額に税率を掛けた分だけ税額が軽減される仕組みです。さらに、保険金や高額療養費などで補填された金額は差し引いて計算します。

一定の市販薬の購入費用を対象とする「セルフメディケーション税制」という特例もあり、通常の医療費控除と選択して適用することができます。

「10万円に届かないから対象外」と判断するのではなく、所得水準や家族分の医療費、補填の有無も含めて確認してみることが大切です。

③ 副業収入が20万円以下なら何もしなくてよい

会社員の方の副業について、「副業が20万円以下なら確定申告はしなくてよい」と聞いたことがある方も多いと思います。ただ、この取扱いは一定の要件を満たす場合に限られ、「何も手続きが不要」という意味ではありません。

給与所得者が年末調整を受けており、給与以外の所得金額が20万円以下である場合には、法律上、所得税の確定申告は不要とされています。ここでいう20万円は「収入」ではなく、必要経費を差し引いた後の「所得」で判定します。

そのため、収入が20万円以下でも経費がほとんどなければ所得も同程度になりますし、逆に収入が20万円を超えていても、経費を差し引いた結果、所得が20万円以下となる場合もあります。

また、この取扱いはあくまで所得税に関するものです。住民税については別途申告が必要とされており、確定申告をしない場合でも、市区町村への申告手続きが必要となる場合があります。

さらに、医療費控除やふるさと納税、住宅ローン控除の初年度申告など、ほかの理由で確定申告を行う場合には、副業分もあわせて申告が必要になります。

「20万円以下だから何もしなくてよい」と考えるのではなく、所得の金額や他に申告が必要な事情がないかを確認したうえで判断することが大切です。

④ 公的年金受給者は確定申告をしなくてよい

公的年金を受給している方について、「年金生活者は確定申告をしなくてよい」と聞いたことがあるかもしれません。たしかに、一定の要件を満たす場合には、法律上、所得税の確定申告は不要とされています。

いわゆる「公的年金等の確定申告不要制度」と呼ばれるもので、公的年金等の収入金額が400万円以下で、かつ、それ以外の所得が20万円以下である場合には、申告義務はありません。

ただし、医療費控除や生命保険料控除、ふるさと納税の寄附金控除などを適用する場合や、源泉徴収された税金の還付を受ける場合には、確定申告を行うことで税額が精算されます。この場合は「申告した方が有利になる」という位置づけです。

また、公的年金以外に給与収入や事業所得、不動産所得などがある場合には、金額によって申告が必要になることもあります。

「年金受給者は申告不要」と一律に考えるのではなく、収入の内容や各種控除の有無に応じて判断することが大切です。

⑤ 住宅ローン控除は会社員なら自動的に受けられる

住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)について、「会社員なら年末調整で自動的に適用される」と思われている方も多いのですが、最初の年だけは確定申告が必要です。

会社員の方でも、住宅を取得した初年度については年末調整では手続きができません。入居した年分について、翌年の確定申告でご自身が申告を行い、住宅ローン控除の適用を受ける必要があります。

確定申告を行うことで控除額が計算され、その後、税務署から「住宅借入金等特別控除申告書」などの書類が交付されます。2年目以降は、この書類を勤務先に提出することで、年末調整で控除を受けられる仕組みになっています。

つまり、会社員の場合でも「初年度は確定申告、2年目以降は年末調整」という流れになります。

⑥ 暗号資産は売却しなければ課税されない

暗号資産(いわゆる仮想通貨)について、「円に換金していなければ税金はかからない」「売却しなければ申告は不要」と考えられていることがありますが、実際には売却以外の場面でも課税対象になることがあります。

個人がビットコインやイーサリアムなどの暗号資産を取引した場合の所得は、原則として雑所得として扱われます。「売却」だけでなく、「他の暗号資産との交換」や「商品・サービスの購入に使用した場合」なども、利益が生じていれば課税の対象になります。日本円に換えていなくても、取引時点の時価で損益を計算します。

たとえば、購入時より値上がりした暗号資産で別の銘柄を購入した場合や、暗号資産で買い物をした場合も、いったん売却したのと同じように利益が確定したものとして計算します。

一方で、単に保有しているだけであれば、その時点では課税されません。あくまで「譲渡や使用などにより利益が確定したとき」に課税関係が生じます。

なお、法人が保有する場合は取扱いが異なり、期末時点での時価評価により課税されることがあります。個人とは計算方法が大きく異なる点に注意が必要です。

また、暗号資産の課税方法については、令和8年度税制改正大綱において申告分離課税への見直しが明記されており、今後制度が変更される可能性がありますが、現時点では従来どおり総合課税の取扱いとなっています。

「売っていないから大丈夫」と判断するのではなく、取引内容や立場(個人・法人)に応じて課税関係を確認することが大切です。

⑦ 競馬・ボートレースなどの払戻金は税金の対象にならない

競馬やボートレースなどの払戻金について、「公営ギャンブルだから税金はかからない」と思われていることがありますが、原則として課税対象になります。

これらの払戻金は、所得税法上「一時所得」として取り扱われます。一時所得の金額は、払戻金から、その的中馬券など当たり券の購入費用と特別控除額50万円を差し引き、その残額の2分の1が課税対象となります。

このとき、経費として差し引けるのは当たり券の購入代金に限られ、はずれ馬券の購入費用を原則として合算することはできません。年間の収支を通算して計算する仕組みではない点に注意が必要です。

一方で、宝くじの当せん金は法律により非課税とされています。そのため、「くじの当せん金=非課税」というイメージから、競馬なども同じ扱いと思われがちですが、税法上の取扱いは異なります。

「公営だから非課税」と考えるのではなく、宝くじと公営競技では課税関係が違うことを押さえておくことが大切です。

⑧ 事業が赤字なら確定申告をしなくてよい

個人事業をされている方から、「今年は赤字だから確定申告はしなくてもよいですよね」と聞かれることがあります。たしかに、所得税は利益(所得)に対して課税されるため、税額が発生しなければ、原則として申告義務はありません。

ただし、赤字の場合でも、確定申告を行うことで利用できる制度があります。

まず、事業の赤字は給与所得や年金所得など他の所得と損益通算することができ、源泉徴収された税金が還付されることがあります。

さらに、青色申告をしている場合、通算しきれなかった赤字(純損失)は翌年以降に繰り越して、将来の黒字と相殺することができます。

青色申告特別控除などの各種特典も、確定申告を行うことが前提となっています。

「赤字だから申告しなくてよい」と考えるのではなく、赤字であっても申告することでこれらの制度を利用できる点を押さえておくことが大切です。

⑨ 16歳未満の扶養親族は税金には関係ない

「16歳未満の子どもは扶養控除の対象にならないので、税金には関係ない」と思われていることがありますが、完全に無関係というわけではありません。

たしかに、所得税・住民税ともに、16歳未満の扶養親族については扶養控除の適用はありません。そのため、所得税や住民税の計算上は、扶養控除として控除額は増えません。

しかし、住民税については、均等割や所得割の非課税判定において、扶養親族の人数が計算に用いられます。そのため、16歳未満であっても扶養親族としての情報は申告書に記載する必要があります。

「控除がない=税金に関係ない」というわけではない点を押さえておくことが大切です。

⑩ 年末調整で決まった内容は後から変更できない

「年末調整が終わったら、その年の税金はもう確定していて、内容の修正はできない」と思われていることがありますが、そのようなことはありません。

年末調整は、給与について源泉徴収された所得税等を、年税額に合わせて過不足を精算する手続きです。会社員の多くは、この年末調整によって給与に係る税額が精算されています。

ただし、医療費控除や寄附金控除(ふるさと納税)、住宅ローン控除の初年度など、年末調整では反映できない控除がある場合や、給与以外の所得がある場合には、確定申告によってあらためてその年分の所得税を計算し直します。

扶養親族の追加や付け替え、各種控除の追加・修正なども、確定申告を行うことで反映させることが可能です。

「年末調整が済んだからもう何もできない」と考えるのではなく、必要に応じて確定申告で内容を見直せるという点を押さえておくことが大切です。

まとめ

確定申告というと、「自分には関係ない」「難しそう」と感じる方も多いかもしれません。しかし実際には、会社員の方や年金受給者の方であっても、医療費控除やふるさと納税、住宅ローン控除など、確定申告が関係する場面は意外と身近にあります。

また、「20万円以下だから不要」「赤字だから不要」「年末調整が済んだから終わり」といった思い込みによって、本来受けられる控除や還付を見落としてしまうケースも少なくありません。

確定申告は、税金を納めるためだけの手続きではなく、税額を正しく計算し直すための仕組みでもあります。制度の内容を正しく理解し、ご自身の状況に当てはめて判断することが大切です。

判断に迷う場合や、取扱いがはっきりしない場合には、早めに専門家に確認することで、無理なく適切な手続きを行うことができます。

「自分は対象外」と決めつけず、一度確認してみる。その姿勢が、結果としていちばん確実な方法といえるでしょう。

※本記事は、執筆時点の法令・制度等に基づいて作成しています。
内容については正確を期しておりますが、今後の法改正等により変更される場合があります。
実際の適用にあたっては、最新の情報をご確認のうえ、専門家等にご相談ください。
なお、本記事の内容に基づいて生じた損害等については、当事務所では責任を負いかねますのでご了承ください。
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