今年も年末調整の時期が近づいてきました。勤務先から申告書を受け取ったという方も、いらっしゃるのではないでしょうか。毎年のことながら、書類を見ると「どこに何を書けばよいのか」と迷ってしまうこともありますよね。
年末調整の書類は一見すると毎年同じように見えますが、改正が反映されるため細部が変わることもあります。昨年の控えを参考にしようと思ったら、今年の様式とは少し違っていた、ということもあり得ますので注意が必要です。
早速ですが、令和7年分からは新しく「特定親族特別控除」が設けられました。これまで大学生の子どもを扶養に入れるかどうかの基準は「103万円の壁」が目安でしたが、改正によってその基準は「123万円の壁」に引き上げられています。
さらに、この特定親族特別控除によって、大学生世代の子どもが123万円を超えてアルバイト収入を得ても、親の所得控除がいきなりゼロになるのではなく、188万円までは段階的に縮小していく仕組みになりました。
対象となる人は多くありませんが、該当すれば控除額も大きくなる可能性があります。本記事では、この新しい控除の概要と、年末調整における申告書の書き方を整理します。
対象となる特定親族
特定親族とは、あなたと生計を一にする19歳以上23歳未満の親族を指します。典型例は「大学生の子ども」です。
- 令和7年分では、平成15年1月2日~平成19年1月1日生まれが対象
- 児童福祉法に基づき養育を委託された「里子」も含む
- 配偶者・青色事業専従者・白色事業専従者は除外
また、所得の要件は次のとおりです。
- 合計所得金額が58万円超123万円以下
- (給与収入のみの場合は、123万円超188万円以下に相当)
従来は「103万円を超えると扶養から外れる」と言われていましたが、改正によりその基準が123万円に引き上げられています。さらに、この制度によって123万円を超えても188万円までは段階的に控除が残る仕組みになっています。
合計所得金額の計算(給与収入のみの場合)
特定親族特別控除の適用判定では、アルバイトなどの給与収入を「合計所得金額」に換算する必要があります。
給与収入が190万円以下の場合、令和7年以降のルールでは
給与収入-65万円 = 給与所得 = 合計所得金額
となります。
例:
- アルバイト収入 130万円 → 130-65=65万円 → 所得65万円 → 控除対象(控除額63万円)
- アルバイト収入 188万円 → 188-65=123万円 → 所得123万円 → 控除対象(控除額3万円)
- アルバイト収入 189万円 → 189-65=124万円 → 所得124万円 → 控除対象外(※188万1円以上は対象外)
収入が増えるにつれて控除額は63万円から3万円まで徐々に減っていき、最後に対象外となります。従来の「壁」というよりも、段階的に下がっていく「なだらかな坂道」のような仕組みです。
申告書の記入方法
年末調整で提出する「給与所得者の基礎控除申告書兼給与所得者の配偶者控除等申告書兼給与所得者の特定親族特別控除申告書兼所得金額調整控除申告書」(長すぎるので、以下「(基・配・特・所)」)の中に、「特定親族特別控除申告書」欄があります。
下図に①~⑧の番号を振りました。 それぞれの記入内容を解説します。
- ① 特定親族の氏名・フリガナ
- ② 特定親族の個人番号(マイナンバー)
- ③ あなたとの続柄(典型例は「子」)
- ④ 特定親族の生年月日(令和7年分は平成15年1月2日~平成19年1月1日生まれが対象)
- ⑤ あなたと特定親族の住所または居所が異なる場合の住所(該当する場合のみ記入)
- ⑥ 非居住者である特定親族の生計を一にする事実(該当する場合のみ記入)
- ⑦ 特定親族の本年中の合計所得金額の見積額
- ⑧ 特定親族特別控除の額(下の「控除額の計算」欄で確認して記入)
提出時期と注意点
この「特定親族特別控除申告書」を含む(基・配・特・所)は、例年11月から12月にかけて勤務先へ提出します。他の年末調整関係書類と一緒に回収されるのが一般的です。
ここで注意すべき点は、年末を待たずに提出するため「合計所得金額の見積額」で記入する必要があるということです。実際のアルバイト収入が年末までに変動する可能性があります。
もし提出後に見積額と実際の所得が異なっていた場合:
- 制度上は、翌年1月末までは「再年末調整」が可能
- ただし、勤務先や年末調整を代行している税理士によっては、再年末調整に応じてもらえない場合もある
- その場合は、翌年の確定申告で修正するのが確実な方法
- 放置すると、給与支払報告書により所得が市町村に報告され、マイナンバーを通じて把握されるため、後日、市町村や税務署から「扶養控除等の確認のお尋ね」が届く可能性がある
まとめ
令和7年分から新設された「特定親族特別控除」は、大学生世代の子どもなどがアルバイト収入を得た場合でも、従来のように一気に扶養から外れるのではなく、段階的に控除が縮小していく仕組みです。
対象となる人は限られますが、該当する場合には控除額が数万円から数十万円単位になることもあり、見逃せない制度です。
実務上は、年末調整の申告書(基・配・特・所)の「特定親族特別控除申告書」欄に記入する必要があります。収入は見積額で書くことになるため、提出後に実際と異なった場合は翌年の確定申告で修正できる、という点も押さえておきましょう。
年末調整の書類は毎年似ているようでいて、改正により細部が変わることもあります。勤務先から渡された最新の用紙を確認しながら、一つ一つ丁寧に記入していくことが大切です。
▼年末調整の関連記事▼
年末調整の他の申告書の書き方も解説しています。ぜひ続けてご覧ください。







コメント