和歌山の税理士・和田全史です。
このところ年末調整に関する話題が続いていますが、今回は少し休憩を兼ねて、タイムリーなニュースを取り上げてみたいと思います。
10月19日(日)に行われたJRAのWIN5で、史上最高額となる5億6,252万1,610円の払戻金が出ました。的中はわずか1票。夢のような金額に、ニュースやSNSでも大きな話題となりました。
こうした高額配当が出ると、必ずと言っていいほど出てくるのが「税金はどうなるの?」という話題です。中には「半分くらい税金で持っていかれるらしい」といった噂もありますが、実際のところはどうなのでしょうか。
今回は、その点を整理してお伝えします。
WIN5の払戻金は「非課税」ではない? 宝くじとの違い
今回のようなWIN5の払戻金には、所得税と住民税が課税されます。これはWIN5に限らず、競馬や競輪、ボートレース、オートレースなど、いわゆる公営競技の払戻金すべてに共通する扱いです。
一方で、同じ“くじ”でも、宝くじ(ロトやナンバーズ、BIGなどを含む)については非課税とされています。これは、当せん金付証票法により「当せん金付証票の当せん金品には所得税を課さない」と定められているためです。したがって、宝くじは特別法によって非課税とされており、当せん金を受け取っても確定申告の必要はありません。
これに対し、競馬などの払戻金には非課税とする規定が存在しません。つまり、法律上「非課税と書かれていない=課税対象となる」という整理になります。したがって、WIN5の払戻金も当然に課税の対象となります。
「半分は税金」って本当? WIN5の税金を計算してみる
今回ニュースになったWIN5の払戻金は5億6,252万1,610円(約5.6億円)。的中はわずか1票でした。ここでは、他の所得や各種控除を一旦無視して、払戻金だけでどの程度の税金になるのかを試算してみます。
まず、競馬の払戻金は一時所得として扱われます。一時所得の金額は、次の計算式で求めます。
(収入金額 − 収入を得るために支出した金額 − 特別控除額50万円) × 1/2
(562,521,610円 − 100円 − 500,000円) × 1/2 = 281,010,755円
※実際の申告では、他の所得と合算し、所得控除を引いた上で千円未満切捨。ここでは便宜上、281,010,000円として計算します。
【所得税】281,010,000円 × 45% − 4,796,000円 = 121,658,500円
【復興特別所得税】121,658,500円 × 2.1% = 2,554,828円
【所得税+復興特別所得税】121,658,500円 + 2,554,828円 = 124,213,300円(100円未満切捨)
【住民税】281,010,000円 × 10% = 28,101,000円
【合計税額】124,213,300円 + 28,101,000円 = 152,314,300円(払戻金比 約27.1%)
「半分は税金で持っていかれる」という噂は、所得税の最高税率45%と住民税10%を単純に足すと55%になるからだと思います。しかし実際には、上の式のとおり、課税対象となる金額は「(収入 − 経費 − 50万円)× 1/2」とされ、おおむね収入の半分だけが課税対象です。その結果、今回のケースでの実際の税負担は払戻金全体のおおむね4分の1程度にとどまります。
高額払戻を受けたときに注意すべきこと
- 投票履歴や払戻金の記録を保存しておくこと。 WIN5はインターネット投票(即PATなど)で行われるため、サイト上の「入出金明細」や「購入履歴」を保存しておくと、申告時の確認が容易です。
- 確定申告書には「一時所得」として記載すること。
- 一時所得の特別控除50万円は、その年中の他の一時所得(保険の一時金など)と合算して、合計で1回しか使えません。
- 税金の納付資金を確保しておくこと。 払戻金をすぐに使ってしまうと、翌年の申告や納付の時期に資金不足になるおそれがあります。
まとめ
WIN5の払戻金は、宝くじのように特別法で非課税とされているわけではありません。したがって、所得税・住民税の課税対象となり、自分で確定申告を行う必要があります。
今回のような5億円を超える高額払戻の場合でも、実際の税負担は「払戻金の半分」ではなく、おおむね4分の1程度にとどまります。それでも金額は非常に大きく、正しい申告と納税を怠ると、追徴課税などのリスクにつながります。
高額配当はまさに夢のようですが、夢のあとには税金が待っています。うれしい話題の裏側にある“現実”も、ぜひ知っておきたいところです。



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